労災事故に遭ったらどんな補償が受けられるの?
Contents
労働災害に遭ってしまった場合は、
- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 傷病(補償)給付
- 障害(補償)年金
- 遺族(補償)年金
- 介護(補償)給付
- 葬祭料・葬祭給付
といった補償を受けることが可能です。
それぞれ、利用出来るケースが異なりますので、ここで確認をしていきましょう。
療養(補償)給付
仕事中または通勤が原因で怪我をしたり病気にかかってしまった場合、病院での治療費は労災保険から支給されます。
治療を行うという現物給付の「療養の給付」と、現金給付の「療養の費用給付」の2種類があります。
どちらも傷病が治癒するまで、もしくは症状が固定するまで給付を受け取ることができます。
「療養の給付」とは労災指定の病院で治療を受けた場合、傷病が完治するまで必要な療養を受けることが出来ます。
「療養の費用給付」とは、労災指定の病院以外で療養を受けた場合、そのかかった費用が支給されます。治療費だけでなく、入院費用・看護費用・移送費など、通常療養のために必要なものは全て支給されます。
※通院に要した費用の実費相当が支給されます。
ただし、療養の費用を差し出した日ごとに請求権が発生し、その翌年から2年の時効がありますのでお気を付けください。
請求の流れ
休業(補償)給付
怪我や病気の治療のために会社を休んだ場合、休業(補償)給付を受けることができます。
会社から支給されない賃金を休業(補償)給付でまかなうことが可能です。
労働者が、業務又は通勤を原因とする怪我や病気のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、休業した第4日目以降から、労災保険の休業(補償)給付が支給されます。
業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合は休業給付が支給されます。
これに加えて、社会復帰促進等事業に基づく休業特別支給金が支給されます。
※労災保険では、各種の保険給付と併せて、労働者の福祉の増進を図ることを目的として設けられた社会復帰促進等事業に基づく金銭の支給を受けられることがあります。
支給額は以下のように決められます。
1)休業(補償)給付=給付基礎日額の60%✖休業日数
2)休業特別支給金=給付基礎日額の20%✖休業日数
休業初日から第3日目の期間を、待機期間といいます。待機期間は、休業初日から通算して3日間であり、連続していても断続してもどちらでも構いません。
業務災害の場合、この期間は事業主が労働基準法の規定に基づき休業補償を行います。
通勤災害の場合は、待機期間に休業給付は受けられないので注意してください。
労働者が所定労働時間のうち一部を休業した場合は、給付基礎日額から実際に労働した部分に対して支払われる賃金額を排除した額の60%に当たる額が支給されます。
休業(補償)給付はどうやったらもらえるの?
①~③のすべての要件を満たす必要があります。
- 業務上の事由または通勤による怪我や病気のための療養であること
- 労働することができないこと
- 賃金を受けていないこと
が条件になります。
注意点
所定の用紙に、必要事項を記入し、事業主および治療担当医師の証明をうけて、労働基準監督署長に提出します。
休業した日数分をまとめて一括請求するのか、または分割請求するかは、労働者が自由に選択することができます。休業が長期間になる場合は1カ月ごとに請求する方法が一般的です。労働者の方は、忘れずに請求しましょう。
請求の流れ
傷病(補償)給付
傷病が治癒(症状固定)するまでは療養(補償)給付を受け取ることができます。
また、治療を開始してから1年6カ月を経過しても治癒(症状固定)しておらず、傷病の程度が重い場合は、傷病の程度(傷病等級1級~3級)に応じて傷病(補償)給付を受け取ることができます。
症状固定って?
これ以上治療をしても回復が見込めない状態のことを指します。
厚生労働省では症状固定を下記のように定義しています。
労災保険の「治癒(症状固定)」とは、業務上の負傷又は疾病に対して、医学上一般に認められた医療を 行っても、その医療効果が期待し得ない状況に至ったものであり、 負傷にあっては創面がゆ合し、その症状が安定し医療効果が期待 し得なくなったとき、疾病にあっては急性症状が消退し、慢性症状は 持続してもその症状が安定し、医療効果がそれ以上期待し得ない 状態になったときをいう。
労働基準監督署長が、医師の意見、レセプト審査を通じて把握した 医療情報等を踏まえ、「治ゆ(症状固定)」を判断。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002c0vt-att/2r9852000002c18c.pdf
支給の内容
法令で定められた傷病の程度(傷病等級)に該当し、その状態が継続している場合、傷病(補償)年金、傷病特別支給金および傷病特別年金を支給します。
傷病等級 | 傷病(補償)年金 | 傷病特別支給金(一時金) | 傷病特別年金 |
---|---|---|---|
第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 114万円 | 算定基礎日額313日分 |
第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 107万円 | 算定基礎日額277日分 |
第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 100万円 | 算定基礎日額245日分 |
障害(補償)年金
傷病が治癒したが、一定の後遺障害が残った場合に障害等級に応じて支給されます。
第1等級~第7等級の場合は給付基礎日額の313日~131日分の障害(補償)年金、第8級~第14級の場合は給付基礎日額の503日~56日分の障害’(補償)一時金が支給されます。
障害(補償)年金差額一時金と障害(補償)年金前払一時金の違い
①障害(補償)年金差額一時金
障害(補償)年金の受給者が死亡した場合、その者に支給された障害(補償)年金の合計額」が次表の額に満たない時は、その差額が一時金として遺族に対し支給されます。
②障害(補償)年金前払い一時金
障害(補償)年金受給権者の請求に基づいて、その障害等級に応じ、次表に掲げてある額を最高限度として障害(補償)年金が一定額までまとめて前払で受けられますが、前払一時金に達するまで年金は支給停止されます。
障害等級と支給日数
障害等級 | 額 |
---|---|
第1級 | 給付基礎日額の1,340日分 |
第2級 | 給付基礎日額の1,190日分 |
第3級 | 給付基礎日額の1,050日分 |
第4級 | 給付基礎日額の920日分 |
第5級 | 給付基礎日額の790日分 |
第6級 | 給付基礎日額の670日分 |
第7級 | 給付基礎日額の560日分 |
請求の流れ
遺族(補償)年金
業務上または通勤途中に死亡した場合に支給され、遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金の2種類があります。
年金は、労働者の死亡当時期の収入によって、生計を維持していた一定の範囲の遺族に支給されます。
一時金は、その年金受給権者がいない場合に一定の範囲の遺族に対して給付基礎日額の1000日分が支給されます。
支給額
遺族数 | 年金額 |
---|---|
1人 | 年金給付基礎日額の153日分 |
55歳以上の妻又は障害の状態にある妻 | 〃 175日分 |
2人 | 〃 201日分 |
3人 | 〃 223日分 |
4人以上 | 〃 245日分 |
請求の流れ
介護(補償)給付
一定の障害により傷病(補償)年金または障害(補償)年金を受給している場合、さらに現に介護を受けていれば、介護料が月単位で支給されます。
常時介護の場合は、介護の費用として支出した額が166,950円を上限として支給されます。
ただし、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合又は支出した額が72,990円を下回る場合は、一律72,990円が支給されます、
また、随時介護の場合は、介護の費用として支出した額が83,480円を上限として支給されます。ただし、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合又は支出した額が36,500円を下回る場合は、一律36,500円が支給されます。
請求の流れ
各労災保険給付の一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000166858.html
種類 | 支給事由 | 保険給付の内容 | 特別支給金の内容 |
---|---|---|---|
療養補償給付 療養給付 |
業務災害または通勤災害による傷病により療養するとき | 必要な療養の給付又は必要な療養費の全額 | |
休業補償給付 休業給付 |
業務災害または通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき | 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額 | (休業特別支給金) 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額 |
障害補償年金 障害年金 |
業務災害または通勤災害による傷病が治癒(症状固定)した後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったとき | 障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から131日分の年金 | (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金 (障害特別年金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分から131日分の年金 |
障害補償一時金 障害一時金 |
業務災害または通勤災害による傷病が治癒(症状固定)した後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったとき | 障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金 | (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金 (障害特別一時金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の503日分から56日分の一時金 |
遺族補償年金遺族年金 | 業務災害または通勤災害により死亡したとき | 遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245日分から153日分の年金 | (遺族特別支給金) 遺族の数にかかわらず、一律300万円 (遺族特別年金) 遺族の数に応じ、算定基礎日額の245日分から153日分の年金 |
遺族補償一時金 遺族一時金 |
(1) 遺族(補償)年金を受け得る遺族がないとき (2) 遺族(補償)年金を受けて いる方が失権し、かつ、他に遺族(補償)年金を受け得る者がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき |
給付基礎日額の1000日分の一時金(ただし(2)の場合は、すでに支給した年金の合計を差し引いた額) | (遺族特別支給金) 遺族の数にかかわらず、一律300万円 (遺族特別一時金) 算定基礎日額の1000日分の一時金(ただし(2)の場合は、すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額) |
葬祭料 葬祭給付 |
業務災害または通勤災害により死亡した方の葬祭を行うとき | 315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額 (その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分) |
|
傷病補償年金 傷病年金 |
業務災害または通勤災害による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過した日又は同日後において次の各号のいずれにも該当することとなったとき (1) 傷病が治癒(症状固定)していないこと (2) 傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること |
障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から245日分の年金 | (傷病特別支給金) 障害の程度により114万円から100万円までの一時金 (傷病特別年金) 障害の程度により算定基礎日額の313日分から245日分の年金 |
介護補償給付 介護給付 |
障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち第1級の者または第2級の精神・神経の障害および胸腹部臓器の障害の者であって、現に介護を受けているとき | 常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(105,130円を上限とする) ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合、または支出した額が57,110円を下回る場合は57,110円 |
|
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(52,570円を上限とする) ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合または支出した額が28,560円を下回る場合は28,560円 |
|||
二次健康診断等給付 | 事業主が実施する定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の検査項目(血圧、血中脂質、血糖、肥満)のすべてについて異常の所見があると認められたとき | (1) 二次健康診断 1年度内に1回に限る (2) 特定保健指導 二次健康診断1回につき1回に限る |
(注)
1 「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に係るものです。
2 表中の金額等は平成29年4月1日現在です。
3 給付基礎日額とは、原則として被災直前3か月間の賃金総額をその期間の暦日数で除した額です。
4 算定基礎日額とは、原則として被災直前1年間の特別給与総額(ボーナスなど)を365で除した額です。
葬祭料(葬祭給付)
葬祭を行った者に支給されます。
「31万5000円分+給付基礎日額の30日分」か「給付基礎日額の60日分」のいずれか高いほうが支給されます。
葬祭料は遺族や被災労働者の会社が社葬を行った場合にも支給されます。
支給の内容
葬祭の費用を負担した者に対して支給します。
①315,000円+給付基礎日額の30日分
②①の額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は給付基礎日額の60日分