製造業の現場における労災事故について
製造業における労災事故とは?
仕事中に発生した事故によって怪我をした場合、被災した労働者は労災による補償を受けることができます。
また、労災事故が発生したことについて、会社に安全配慮義務違反がある場合、労災では補償されない損害、慰謝料や休業補償、障害補償の不足分について、会社に損害賠償請求を行うことができます。
金属加工業、食品製造業、食品加工業などの製造業の現場においては、商品を加工・製造する過程で、様々な機械を取り扱うことが一般的であり、その過程で機械に体や手指を挟まれる、巻き込まれる事故が数多く発生しています。
このような事故により、手指の切断、骨折などの大怪我を負うことも多く、労災事故に発展することになります。
労災事故への対応方法
製造現場で事故被害に遭われた場合、まずは労災申請を行ってください。ただし、会社が労災の申請を行ってくれない場合もありますので、そのような場合は、自分で行うこともできますが、不安な場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。
さて、労災による主な補償内容としては、治療費の補償である療養補償、給与に対する補償である休業補償、後遺障害が残った場合の補償である障害補償給付があります。
なお、手指を切断した場合に支給される障害補償給付は、次の通りとなります。
第3級 | 5号 両手の指全部の喪失 |
第4級 | 6号 両手の指全部の用廃 |
第6級 | 8号 片手の指全部、又は親指を含む指4本の喪失 |
第7級 | 6号 片手の親指を含む指3本、又は親指を除く指4本の喪失 7号 片手の指全部、又は親指を含む指4本の用廃 |
第8級 | 3号 片手の親指を含む指2本、又は親指を除く指3本の喪失 4号 片手の親指を含む指3本、又は親指を除く指4本の用廃 |
第9級 | 12号 片手の親指、又は親指を除く指2本の喪失 13号 片手の親指を含む指2本、又は親指を除く指3本の用廃 |
第10級 | 7号 片手の親指、又は親指を除く指2本の用廃 |
第11級 | 8号 片手の人差し指、中指又はくすり指の喪失 |
第12級 | 9号 片手の小指の喪失 10号 片手の人差し指、中指又はくすり指の用廃 |
第13級 | 6号 片手の小指の用廃 7号 片手の親指の指骨の一部喪失 |
第14級 | 6号 片手の親指以外の指の指骨の一部喪失 7号 片手の親指以外の指の遠位指節間関節の屈伸不能 |
もっとも、労災では、慰謝料は一切支払われません。
また、休業補償は、基本的に基礎収入の60%しか補償されず、後遺障害が残った場合の障害補償も金額が十分とはいえません。
では、慰謝料や休業補償や障害補償給付の不足分は、どこにも請求することができないのでしょうか。
この点、労災事故の発生について会社に安全配慮義務違反が認められる場合、会社に対する損害賠償請求を行うことが可能です。例えば、商品加工業の製造現場における商品加工用機械の使用については、労働安全衛生規則において、開口部から人の身体の一部が可動部に入ることを防止するための囲い等を商品加工機に設けることを事業主に義務付けています。
また、商品加工機について、定期的に点検を実施しなければならず、その使用についても、労働者を雇い入れる時などに、安全又は衛生について教育を行わなければならないと定められています。
したがって、会社が、このような労働安全衛生規則に違反する場合、安全配慮義務違反があると認められ、会社に対する損害賠償請求を行うことができます。
また、労働安全衛生規則等の具体的な法規定がない場合でも、会社が、個別のケースにおいて、労災事故の発生を防止し従業員の生命身体の安全を確保するために配慮すべき義務を尽くしていないと判断される場合は、会社に対する損害賠償請求を行うことが可能です。
会社に安全配慮義務が課されるケースかどうか、会社に安全配慮義務違反があったかどうかの判断は、高度に法的なものであり、専門家でなければ判断が難しいものといえます。
製造現場における労災被害に遭われた方で、今後の対応にお悩みの方は、是非一度ご相談下さい。